散華の麗人
茶々は分城にあった部屋から私物を持ち出し、風正の元に来ていた。
「それは?」
布で包まれた刀を見遣り、風正は問う。
「“桔梗”という刀だそうです。陸羽様から頂きました。」
「ほう。」
風正は睨んだ。
「……では、それに応えられる働きをせねばな。」
敦賀はやんわりと言う。
風正に“嫉妬はみっともない”というように視線を送った。
「言っておくが、羨望の類ではない。」
風正はそれに気付いて否定する。
「“誰も彼もが我が身を評価せぬ”などと言う輩は傲慢だ。」
「平懐は良いが、傲慢は許せぬ。と?」
「敦賀。」
「ははは、ちと、誂いが過ぎたな。失敬。」
敦賀はぺこりと礼をする。
「時雨よ。」
「今は違う。」
「そうか?」
そう言うと敦賀は目を細めた。
「主はその名に合う者か?」
「……貴様は何処まで私を見透かす気だ。」
風正は敦賀を睨む。
「羨望ではない、が……その目は焦りを帯びておる。」
敦賀は見透かしているように言った。
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