散華の麗人
呆れている風正と楽しそうな子供を見ながら、茶々は風正の後ろに立った。
「大体、俺は敦賀風正。時雨は昔の名だ。」
「えー?さようか?では、風正どのとよばねばな!」
子供は無邪気に笑う。
「そこの子供は誰か?」
「茶々にございます。先日より、風正殿にお世話になっております。」
「そうか。われは惣右介。よろしくな。」
惣右介と名乗る子供は挨拶をする。
「こいつはあいつの子だ。」
「敦賀殿のですか。」
「馬鹿だから、くれぐれも用心しろ。」
風正は呆れ返っている。
「馬鹿というと、馬鹿になると父上がいっておったぞ?」
「喧しい餓鬼だ。向こうで遊んでろ。」
「えー?あそんでくれぬのか?」
「暇ではない。」
そう言うとさっさと去って行ってしまった。
しかし、惣右介は付いてくる。
(嗜めるべきだろうか。)
そう思ったが、気配に気付かない風正ではないと知っている茶々は何も言わない。
問題があるのなら、叱咤して追い払うに違いない。
彼は遠慮するよりも正しいことを選ぶ男だ。
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