散華の麗人
離れにある鍛錬所に着いた。
此処は普段は敦賀の家臣達が鍛錬しているが、今は使用していないらしい。
風正は何も言わずに、帯刀している木刀と同じ大きさの竹刀と一回り小さな竹刀を奥から出した。
「怪我する覚悟があるならば、受け取れ。」
一回り小さな竹刀を乱暴に差し出して惣右介に言う。
「いいのか!?」
その驚いた顔から察するに、普段は追い出されているのだろう。
「餓鬼がひとりでもふたりでも変わるものか。」
そう悪態を吐くと、茶々にもうひとつの竹刀を渡す。
「返答が無いならば去れ。」
「やる!」
惣右介は竹刀を受け取った。
「ふん。貴様も武芸を会得しなければならぬと自覚はあるようだな。」
「それもある。」
風正に惣右介は笑う。
「だが、時雨……じゃない風正どのの剣技は好きだ!」
「は?何を寝ぼけているんだ。叩き殺すぞ。」
惣右介に風正は眉を寄せる。
「戯言は知るか。」
そう言うと茶々と惣右介を見た。
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