散華の麗人
清零国の隣に上尾国がある。
上尾国は奇術師と呼ばれる種族が存在する国で国王を神聖なものとして敬っている。
かつての酒田国、現在の細川国北部と同盟があったが、酒田国が細川国に負けた時に破棄された。
清零国に半分は奪われているが、辛うじて小さな国として存在している。

今回の同盟は、恐らくは奇術師狙いだろう。
農業も武力も少ないあの国ではそれくらいしか取り柄がない。
資源も清零国に奪われている。

「それで、我が国と同め」
「ええよ!」
(返事早!!)
決断の早さに風麗は驚く。
「バカモノが……」
陸羽が呆れた表情で溜め息を吐いている。
「では、この書類に印鑑を」
「ほいよ。」
(またしても、早!!)
リアンの言葉を聞こうともしていない一正に風麗は呆れた。
(陛下……)
与吉郎は心配そうにしている。
(こんなのでいいのか!?)
風麗は一正を呆れた表情で見た。
「んで、あんたは上尾国と同盟を組むように話をつけてや。」
「その件でしたら、既に同盟を組んでおります。」
「そか!!」
リアンに一正は驚く。
「スゲーな!あんたは。この国に欲しいくらいや。褒美は何がええか?金か?土地か?」
「土地はやめい。バカモノ。」
一正に陸羽が溜め息混じりに言う。
「御礼など要りませんよ。ただ、貴方達の国が強く有り続けることだけが願いです。」
「そか。」
リアンに一正は満足そうに笑う。
「本当にリアンは有能やな~♪」
「これで、このバカモノと昔からの馴染みとは……」
一正を見ながら、陸羽はやるせない気持ちで首を振った。
「リアン殿は陛下の幼なじみなんじゃ!」
与吉郎は風麗に言った。
「小姓の頃からの仲やで。」
一正は自慢気に風麗に言った。
「小姓の頃ですか……」
リアンは遠い目をしている。
「あの頃は楽しかった!!」
「お前だけな。」
陸羽が呆れる。
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