散華の麗人
風麗は一正の元へ向かった。
一正は城から下を見下ろしている。
「陛下……あの」
「来なくてもええと言ったが?」
一正は風麗を見ずに答えた。
「ここへは私の意思で来ました。貴方の命ではありませぬ。」
「わしがそんなに頼りないか。」
その言葉通り、一正の背はどこか頼りなかった。
いつもは明るく、迷惑な程眩しい彼も、今はその輝きは消えている。
(でも、そうじゃなくて……)
風麗は言葉に迷った。
「確かに、それも一理ありますが……私は」
そこで言葉は止まってしまう。
「私は……」
風麗はふと、一正の視線の先を見た。

城の付近では、侍女が忙しなく走り回っている。

そして、村の方では村人が懸命に働いている。

「私もここが好きなのです。同じ“人間”として皆を見ることが出来る場所が。」
風麗は静かに笑った。
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