散華の麗人
一正は尚、振り向かない。

「……陛下」
「くくくっ」
風麗が声を掛けようとすると、一正は肩を震わせた。
「?」
「あっはっはっは!!」
風麗が怪訝そうな顔をすると、一正は笑った。
そして、こちらを振り向く。
「あんたは面白い奴やな!!本当に。」
「陛下ほどではありませんよ。」
一正に風麗はため息混じりに言った。
「いやいや、あんたの方がおもろいわ。」
「私は何の特徴もない、ただの一傭兵に過ぎません。」
「へー……」
溜め息混じりに答える風麗を一正はジロジロと見る。ジロジロと見られて、風麗は不愉快そうだ。
「そんなに、ここが好きなのが可笑しいですか?」
「いや。」
眉を寄せる風麗に一正は笑って首を振った。
「ただ、わしと同じような目線で見る奴が珍しいだけや。」
一正は村の方を見た。
「上に立つ者は皆、下々の者を見ようとはしない。煌びやかなこの城が好きでも、あの綺麗な山が好きでもな。」
一正は遠くの山々を見る。
「民を考え、行動する奴なんて、このご時世にいない。」
はっきりと言う。
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