散華の麗人
そして、悲しそうに笑った。
「陸羽様は?」
風麗は首を傾げた。
「ジジィは確かに民を案じはするが、民が幸せになる為に動くかと言えばそうではない。ジジィの目的は天下統一や。」
「それは、民の為では?」
一正を諭すような口調で言った。
「せやな。だが、民の為に動くことは考えていない。ジジィはわしと違って、兵や家臣、全ての人を見ている。だから、わしとは見ている世界が違う。」
(この人は)
風麗は一正を、どこか納得がいったというような表情で見た。
(潔癖なまでに民のことしか見ていない。民の為にと常に行動している。)
そして、目を伏せた。
(反感を買うだろうな。)
ゆっくりと一正を見る。
その視線に一正が明るく笑った。
「かといって、悲観ぶらないし、悲しいと言う程には悲しくもないがな。」
そう言うと、大声で笑った。
「わしはあんたが気に入った。本当に!」
一正は風麗に顔を近付けた。
「……真っ直ぐな目や。あんたが男なら、この国の未来を任せたいな。」
「勿体無きお言葉。」
風麗は冷静に反応した。
「しかしながら、私は一介の傭兵にあります。そのようなことは過ぎた世辞かと。」
「あんたは本当に面白い奴や!」
一正はケラケラと笑う。
「あんたやから言うに決まっとるやろ。」
「は?」
風麗は意味がわからない様子で眉を寄せた。
「まぁいい。戻るぞ。」
一正はそう言って、城内に続く梯子を下った。
「はい。陛下。」
風麗もそれに続いた。
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