散華の麗人
そして、時は流れ暫しの沈黙があった。

仕事に集中する一正と隣で資料を運んでいる風麗。
初めは言葉を交わしていたが、徐々に無言の了解で作業していた。
「これはどちらに置きましょう?」
風麗が資料を差し出す。
「あぁ、これはな……」
“ガタンッ”
一正は答えかけて、硯をひっくり返した。
「陛下!?」
風麗が慌てて硯を元に戻し、その場を片付けた。
「ゴホゴホッ」
一正は机に倒れ込むようにして激しく咳込む。
「誰か医者を」
すぐに立ち上がる風麗を一正が掴む。
「ならん!!」
一正は鬼気迫る表情で睨んだ。
「……こんなとこで立ち止まるわけにはいかんのや。」
「ですが」
「自分のことくらい、わしが1番わかっとる!やけど、それ以上にこの国が大切や!!」
その言葉と必死な表情に何も言えなくなって黙る。
「……私に何かできることはありますか?」
医者を呼ぶ代わりに、風麗は一正に静かに言った。
それが、今の自分にできる最善の行動だと思うからだ。
「資料を。」
そう言うと仕事を再開した。
止めても無駄だと悟ったのか風麗は資料を手に取った。
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