散華の麗人

そして、大きく伸びをした。
「まぁー、遊郭はほどほどに行って」
“バシンッ”
まるで、打ち合わせをしたかのような阿吽の呼吸で一正を千代が張り倒した。
「痛ってぇえええええええ！！」
一正は頭を押さえて呻いた。
「少しは女らしくせい！！そんなんやから、一緒に居たくないんや。」
「陛下」
風麗は“言い過ぎ”と注意しようとしたが、既に頬を紅潮している千代を見て、やめた。千代が肩を震わせる。
「わらわが、嫌いと……そういう意味ですか！！？」
顔を紅潮させ、怒鳴りつけた。
「ちゃうって、好きやって！！」
「では、一緒に居たくないとは何事で？」
「あー……えー……」
一正は言い訳を考えていたが、思いつかず、あさっての方向を見た。
「つ、つんでれ、や。」
どこから覚えてきたのか、そんなことをぎこちない口調で言って、千代を撫でた。
「……」
千代は尚も不服そうにしていたが、ため息をついて、一正を見た。
「…………わらわが来たのは、夫婦喧嘩の為ではありませぬ故。」
そう言うと、千代は部屋へ行くよう視線で促す。
「兵のことか。」
一正はそう言いながら、部屋へ向かった。