散華の麗人
――薄暗い牢

そこで目が覚めた。

(何だ?)
遥葵は辺りを見回す。
座敷牢の前、丁度遥葵の視線の先に不気味な人形が5体在る。
見つめるような少女の人形が2体、その向こうに少女の人形の兄なのだろう人形が2体。
真ん中に顔が無い長身の人形が此方を見下ろすように在る。
(悪趣味。)
心の中で悪態を吐く。
右の少女の人形には鞠。
左の少女の人形には菊。
表情は笑っているようにも悲しんでいるようにも見えた。
まるで、自分の心を覗いてくるような目だ。
男の人形は2体とも武器を持っていて、怒った顔をしている。
静寂と激情。
相反する情と何もない顔。
5体の人形から視線を逸らす。
辺りは暗くてよく見えない。
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