散華の麗人
明かりは無く、蝋燭が1本だけ目の前にある。
「何でこんなところにいるんだ。」
遥葵は動こうとするも、両手両足に枷を付けられていて身動きがとれない。
壊す腕力が備わっているわけではなく、諦めていた。
「はぁ~~、ここまでかぁ。」
呑気な口調で言う。
別に、生きることに執着していなかった。
死んだら雅之に怒られるということくらいしか考えていない。
「どんな顔するかな。」
無愛想な彼がどんな顔で怒るかを想像して笑う。
「まぁ、いいよ。」
諦めて抵抗しない。
(それにしても、私なんかを捕まえるなんて……国王派かな。)
そう思いながら首を傾げる。
陸羽派の情報を訊かれたって、自分はひと握りしか知らない。
それに、吐くつもりも毛頭なかった。
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