散華の麗人
じゃら、と枷が外れた。
「お前の動向は監視している。勝手な真似をしようとしても無駄だ。」
そう言うと遥葵を外へ案内した。
「取引は成立したようだな。」
外に居た青年が言う。
この展開が予測済みだという口振りだ。
「あぁ。予定通りだ。」
クスクスと笑う様子を遥葵は面白くなさそうに見る。
「あんたが監視する人?」
遥葵は青年を見た。
「そうだ。」
青年は遥葵に興味がなさそうだ。
返答すると付いてくるように促した。
遥葵は大人しく付いていく。
(優男じゃない。こんな奴、すぐにでも殺してやる。)
そう思いながら手紙を見る。
そして、雅之の隣に居た風麗の姿を思い浮かべる。
(あの女の方が殺したい。よし、あの女の後で殺してや……いやいや。あの女は悔しいけど陛下の傭兵だし、やめよう。)
嫉妬深い中でも常識は残っていたらしい。
そんな考えを知ってか知らずか、目の前の青年は淡々と歩いた。
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