散華の麗人

これは辻丸が父から聞いた話だ。
辻丸が幼く、国王である父がまだ居た頃
幼い辻丸は母と居た。
『リアン』
母はリアンを呼ぶ。
『貴方とはもうお別れですね』
リアンはこちらを振り向くと意味有り気な微笑を浮かべた。
『機は熟した。』
リアンはそう言いながら母の背後にある机を見た。
机上には写真がある。
三人が写った写真だ。
『もう、あの頃のようにはできない。』
『あれは』
母は写真を見た。
『私が撮った写真。幸せな……』
『幸せ?貴方が言うことですか。』
リアンは嘲笑した。
母はこの発言については辻丸が問うても答えてくれない。
その後にリアンはこの国の敵方に回った。
母の行方も分からなくなってしまった。

「お前は裏切り者だ。」
懐かしい表情を憎悪に変える。

『貴方は自分の周りさえ良ければ満足なのでしょうか』

滅ぼした国、それに対して考えたことはなかった。
< 748 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop