散華の麗人
部屋には一正と風麗と千代が居り、出入口には襖越しに2人の侍女が座っている。
「先に成田へ向かわせた兵はこの城に滞在している兵のみと聞きました。」
「あぁ。」
千代に一正は相槌を打つ。
「リアンの兵が10日後に成田へ行く予定や。」
「その時、貴方も?」
「いいや。」
一正は眉を寄せて答えた。
「わしは本城の兵と共に行く。出兵の命は下してあるはずや。」
「はい。本城の兵には、大村隊・新井隊・戸尾隊がありますが、そのうちの大村隊はこちらへ向かう予定です。」
千代は静かに答えた。
風麗は千代と一正を見る。
(……こう見ると、夫婦、には見えないな。)
仲睦まじい雰囲気よりも張り詰めた空気にそう感じた。
「来るには、何日かかる?」
「わらわは3日で来れました。彼らなら、2日で来れますよ。」
「武具の調達などを考え、出立は明日か明後日だな。」
「そうでしょうね。」
一正に千代がうなずく。
「風麗。戦支度をすると皆に伝えろ。」
「は。」
風麗は、短い返事の後、襖を開け、侍女に伝えた。
< 75 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop