散華の麗人

用心棒

そんなある日、一通の手紙が風麗の元へ送られてきた。
文とは違い、質素な洋風の便箋だ。
送り主はわからない。
届けて来た者の姿は無く、部屋の前に置いてあるのを風麗が見つけただけだ。
「なんや?」
一正が怪訝そうに風麗を見る。
「“紀愁”?」
宛名は一正が知らない名前だ。
「……」
風麗は目を伏せた。
その名前を知っているのだと一正は解る。
「どうやら、あんた宛らしいな。」
そう言って風麗に返す。
しかし、風麗は封を指でなぞっただけで開けなかった。
< 752 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop