散華の麗人
どちらにしても、数秒、見とれてしまった。
『おや。大丈夫でしたか?おちびさん。』
その者は微笑みかけた。
風麗はその者に見覚えがあった。
傭兵が力を競う闘技場で人間離れした空中戦を見せた人物だ。
空中戦ではこの者に勝った者はいない。
『お前……天狗と言われてる奴か。』
それ故に、“天狗”と例えられている。
『ん?そのようですね。』
風麗に天狗は他人事のように言う。
『あまりこの辺りを出歩くと危ないですよ。』
『余計なお世話だ!!それに……だいたい、私は傭兵だ!』
そう言い切って、風麗は急に黙ってしまった。
『…………よ、傭兵に、なる予定だ。』
『そうですか。』
天狗は微笑む。
『貴方には余裕でしたか。わかりました。次からは手出ししませんよ。』
そう言うと、天狗は笑顔のままで一礼する。
『礼なんか言わないからな!』
風麗は膨れっ面のままで去った。
(いけ好かない)
腹が立っていた風麗はそう思った。
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