散華の麗人
それを見たあとに一正は千代を見据えた。
「……新井隊・戸尾隊は来ないのか?」
「えぇ。」
(厳しいかもな……)
一正は小さく舌打ちをした。
(成田軍は十万以上の兵を率いてくるはずや。此方は多く見ても、リアンの兵が二万。ここの兵が二千。そして、大村隊……)
考えながら、一正は眉間にしわを寄せる。
風麗は物珍しそうに一正を見た。
(あ……)
ふと、陸羽と一正の面影が僅か重なった。
(血が確かにつながっている、か。)
風麗の目に初めて、一正が頼もしい王に映った。
王は気難しい表情をしている。
「大村隊の人数は」
「四千五百です。」
切羽詰まったような口調の一正に千代は冷静に言う。
「何やと!?」
一正は狼狽した。
「本城の兵は十万はおる筈や。なのに、大村隊が、何故、こんなに少ない!?三万くらいは居ておかしくない筈や。」
「何故、そんなに切羽詰まってるのです?」
千代は冷静に言う。
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