散華の麗人
雅之は屋敷の外に居た。
(何だ?)
不穏な気配に一正が居る方へ足を向ける。
その屋敷の裏手から僅かな気配を察して走った。
既に姿はなく、辺りを見回す。
(危害を加えているわけではない、か。)
屋敷の方が静かなことから、憶測する。
不意に裏山の方に人影を見つけた。
(!!)
気配の主かも知れないと思い、追う。
その人影は此方に気付いた。
「あ!」
二人居る人影の片方が声を上げると此方に走ってきた。
しかし、もう片方に掴まれた。
「何するのよ!」
「馬鹿か。まだ役目を終えてない。」
「手紙は渡したよ!」
「報告するまでが役目だ。」
「なによ!けち!」
ぎゃーぎゃーと喚く声には心当たりがあった。
「大馬鹿糞餓鬼。」
その光景に雅之は深い溜息を吐いた。
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