散華の麗人
後方に飛躍すると、小さな崖の方へ放り投げた。
「去れ。」
逃げろと言わずにそう突き放す雅之に遥葵は頷いた。
「でも、せっかく会えたのに。」
悲しそうにしていたが、柚木の所へ帰らねばならないことを解っていた。
言葉を発さずに踵を返すと走った。
それを横目で見ると雅之は笑う。
(聞き分けが良い奴だ。)
“良い子”だと言うように目を細めた。
会えた喜びに浸りたいのは雅之も同じだ。
(言ってやらないが。)
意地悪に笑う。
そして、眼前の敵を見据えた。
「年上だからって遠慮する気はないから。」
青年はそう言うと剣を振り上げる。
「随分と侮ってくれるな。」
雅之は身を屈め、青年の腕を掴み短刀を振る。
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