散華の麗人
青年は間一髪で避ける。
「貴様は陸羽派ではないと言った。では、不法入国者か?」
「言っただろう。唯の用心棒さ。」
「吐け。貴様の主の目的を。手紙とは何だ。」
雅之の攻撃を躱すと青年はひらりと飛躍して距離を置く。
「散華の麗人……俺の主はその女に執着しているらしい。」
「馬鹿国王に仕えているあの女が目的か。」
「そうだ。」
青年は肯定する。
風が吹き、どちらも戦闘態勢を崩さないままで視線をぶつける。
「散華の麗人には俺も興味ある。だから、用心棒として協力した。そうでなければ、一国の国王の傭兵を狙った計画など、やるはずがない。最悪の場合、国王に手を出すことになりかねないからな。」
「随分と容易に話すのだな。」
「俺は傭兵ではなく用心棒だ。生憎、秘密厳守の考えはない。生きるのが最優先だ。」
「ほう。」
雅之は面白いと言うように目を細めた。
「考えが変わった。」
そう言うと武器を収めた。
だが、その気になれば勝てる自信があるような様子だ。
実際に雅之が本気を出せば青年は敵わないだろう。
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