散華の麗人
目は気怠げで商売を真面目にやる気があるとはとても思えない。
「貴様を買う気はない。だが、その情報は買おう。何が望みだ?」
「それは良い。好都合だ。」
そう言うと雅之を真っ直ぐに見る。
「散華の麗人について。その情報が知りたい。」
「良かろう。」
雅之は容易に答えた。
抵抗するかと思っていた青年は驚く。
「散華の麗人。名は風麗、といったか。細川国王に仕える十六を過ぎた位の子供だ。戦闘力は高く、三百の敵を一人で倒してしまうほどだ。もし、命を狙おうというならやめたほうが賢明だ。」
淀むことなく言うと、真っ直ぐに青年を見た。
「他に、知りたいことは?」
「いいや。」
青年は首を振る。
「随分と容易く話すんだな。」
「それだけ貴様の情報を評価しているということだ。」
雅之は言う。
「だが、どうせ知ってはいたのだろう?」
(持ちたかったのは確証だろう。)
そう思うのは青年の表情に驚きがなかったからだ。
むしろ、旧知の仲の話を聞くかのように至極当然な顔をしている。
「あぁ。確証はなかったが。」
その返答は予想済みだ。
< 771 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop