散華の麗人
初対面だが、直ぐに理解した。
「まさか……」
「そうだよ。」
予想を肯定する。
「陽炎、兄さん……」
「ふふふ、覚えてくれていたんだね。」
陽炎と呼ばれた者が笑う。
生まれてすぐに親戚をたらい回しにされ、傭兵として売買されていたという者。
二人もその話は聞いたことがある。
「力尽くで手に入れるのも面白いけれど、今は会えただけで良しとするか。」
陽炎はくすくすと笑う。
「じゃあね。」
優しい笑みで風麗に手を振ると歩み始めた。
「必ず、迎えに来るよ。……僕の風麗。」
去り際に陽炎は笑う。
風麗は驚いた顔のままで凝視していた。
「待て。」
雅之が攻撃を仕掛けた時には陽炎の姿は無かった。
(逃げ足が速い奴だ。)
ギリ、と奥歯が鳴る。
< 778 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop