散華の麗人
柳は気怠げな態度で去ろうとする。
陽炎とは違い、急ぐ素振りは見せない。
「おい。」
風麗は柳に“逃げるな”と威嚇する。
「あんたに会うのがあの人の目的。俺はその傭兵として行動しただけさ。目的を果たした以上、長居する気はないね。」
「変わらないな。」
柳に風麗は言う。
「ふ、……なんだ。」
安心したように柳は笑う。
軽薄でやる気がなさそうな態度に風麗は顔をしかめる。
「てっきり、忘れたのかと思っていた。」
過去を思い返しながら言う。
「へなちょこ。」
幼い頃にそう呼んだように風麗は呼ぶ。
「心外だな。こう見えて、前よりは強くなったはずだけど。」
柳は苦笑する。
「師匠も心配していた。今までどうしていた?」
「色々あってね。」
そう言って、風麗を敵の手から逃がした時を思い返す。
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