散華の麗人

千代が溜め息を吐いた。
「大村隊のことですが」
千代は話を切り出す。
「以前は、大村隊が五万、新井隊が２０６８２、戸尾隊が３０９８２人でした。しかし、大村隊の総大将・大村重次が戸尾隊の総大将・戸尾黨和と対立した。」
「元々、仲悪かったからなぁ……」
一正はため息を吐く。
「理由はそれだけではありません。新井と戸尾が密かに同盟を組んでいたのです。それも、大村を孤立させるために。」
「柚木の仕業か。」
千代はうなずく。
一正は溜め息を吐いた。
「柚木直睦……わしを快く思わない奴らの１人、か。“陸羽派”という名目で動いているらしいな。」
「えぇ。」
「だから、わしは柚木との親交がある戸尾・新井を警戒し、わしに昔から色々と尽くしてくれた大村重次に半分を与えた。」
「……それが、裏目に出ましたね。」
千代も気難しい表情になった。
「対立の末、争いになり、戸尾軍に新井軍が同盟を理由に加わり、大村側が負けた。負けた大村の兵を、戸尾が奪った。」
「なるほどなぁ……」
一正は眉間に皺を寄せた。
「この争いは家臣同士の私闘という形で陸羽様が収めました。なので、表沙汰にはなっていません。そして、負けた大村の兵力の増加をしました。」
「ジジィは隠居の身やろ。」
「えぇ。ですから、表向きにはそちの名義ですよ。」
「さよか。」
（わしの名を勝手に……）
一正は納得の後、不快そうに顔をしかめた。
「しかしながら、元凶がそちですからね。兵力増加に不満を持っているようです。故に、すぐには不可能ですね。」
千代はため息を吐く。
「……わしが、もっとしっかりしとればな。」
「今更です。」
「まぁ、な。」
つまらなさそうに返す千代に、一正は苦笑する。