散華の麗人
柳は懐かしむように問う。
「秋月師匠は元気にしているか?」
「自分で確かめればいいだろう。」
風麗は突っ慳貪に言う。
「……師匠からの手紙が何者かによって送られてきた。」
そう言うと懐から手紙を出す。
(“手紙”とはこのことか。)
雅之は納得した。
「相変わらずらしい。」
「山奥で隠居しているとか道場に復帰しているとか、はたまた闘技場で名を馳せているとか。……噂に過ぎないが。」
「噂だけが独り歩きしているな。師匠は病に伏している。」
「そうか。」
柳は頷く。
「それで、会いに行くんだ。」
「ああ。」
風麗は柳を見る。
「兄さんが何を企んでいるかは知らないが、細川に危害を加えるならば容赦はない。それはお前もだ。」
「場合によっては敵同士、か。覚悟しておこう。」
柳はそう言うと笑って去った。
追う必要も殺す必要もないと一正も雅之も追わない。
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