散華の麗人
風麗は手紙を見る。
(多分、へなちょこか兄さんの仲間が送ったに違いない。)
「敵同士……上等だ。」
吹っ切るように言い切った。
風麗は一正の方を見る。
「陛下。」
「ああ!積もる話は終わったかいな。」
黙っていた一正は笑う。
「感動の再会は何処か他所でしろ。」
雅之は心底迷惑そうだ。
「すまない。」
そう謝ると苦笑する。
「生き別れの兄、か。」
そう言うと陽炎が去った方を見る。
「生まれる前から兄さんは傭兵としてたらい回しにされていた。声も姿も知らない兄にいざ会うとなると……変な感じだ。」
「感傷か。」
雅之は嘲笑う。
「いいや。」
風麗は真っ直ぐ前を見据える。
「感傷に浸るくらいなら今すぐ陛下を裏切り、兄さんの所へ行くさ。」
そう言うと一正を見る。
「私はとうの昔に決めてある。死に場所は此処だと。」
その決意は幼い頃から決めている。
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