散華の麗人
散るときは傭兵として。
“ひとりの女”という認識は捨てた。
もう、両親を亡くした自分ではない。
「そうか。」
一正もまた、風麗と同じ真っ直ぐさで見る。
その真っ直ぐさは自分にはないものだと雅之は悟る。
(前しか見えていない、か。)
ならば、自分の役目はその道を開けることだ。
(面倒な。)
それは厭うことではない。
雅之は二人を見た。
「死に急ぐなよ?」
「当然。」
「ええ目付きや。」
風麗に一正が笑む。
「ところで、さっき“秋月師匠”と言っていたな。手紙には“紀愁”とあったが。」
「はい。」
一正に風麗は頷く。
「秋月紀愁という名前です。」
「ほう。納得や!」
「考えれば解る話だろう。低脳ポンコツ国王。」
「あんたは余計や。」
納得した一正を嘲笑う雅之に一正が口を尖らせた
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