散華の麗人
雅之は既に一正のことを意に介していない。
「それで、手紙の内容は何だ?」
「師匠の近況報告だ。簡潔に言えばな。」
風麗が答えた。
「それで、会いに行こうって話になったんや!」
「……それで、こんな所に来たのか。」
雅之は少し呆れている。
「貴様、柚木との約束を忘れていないだろうな。」
「それは税金を徴収してやりくりするって話やないか。」
「低脳が。」
一正に雅之は罵倒する。
「その場凌ぎに過ぎない。第一、問題は山積みだろう。後継の扱い然り、元成田国王のこともある。」
「後継については今は未だ政治の権限を譲る気はない。」
「それを陸羽派が黙って見ているわけがない。」
そう言いながら城へ向かう。
一正は唸る。
「陸羽派は先ず、後継を狙うだろう。そして自分らの手中へおさめる。そうなれば貴様に勝ち目は無い。」
「……」
「忘れるな。貴様に時間は残されていない。」
冷淡に雅之が言う。
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