散華の麗人
風麗は何か言いかけてやめた。
「陛下。私のことは良いですから。お気持ちで充分です。」
「いいや。」
一正は否定する。
「約束を果たせば柚木は取引通りに動く。そういう男や。」
「それで、他は放っておいて呑気に知人の所へ行くのか。」
呆れて奴だという顔をした。
「いいや。先に本城の秀尚と陸長に会う。」
「で?」
「説得をする。」
「具体的には?」
「わしの想いを知ってもらう。」
「抽象的過ぎる。」
「せやけど!」
一正が怒鳴ると雅之は冷淡な表情をする。
「細川よ。」
凍りつくような声音で呼ぶ。
「慎重になれ。今は柚木との約束と陸羽派のことが先だ。そして、これは貴様にしか出来ない仕事だ。」
「……」
一正は眉を寄せた。
< 785 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop