散華の麗人
無言のままで3人は城へ戻った。
目立たないように裏口から入る。
門には利光が居た。
どうやら3人が来るのを待っていたらしい。
一正と目配せすると利光が門を開く。
そのまま誰ひとり言葉を発さなかった。
風麗は困った表情をしている。
(こんな時に言うべき内容じゃなかったな。)
手紙のことを胸にしまうべきだったと後悔する。
風麗は気まずさをどうにか誤魔化したい気持ちだ。
(私の馬鹿……)
自分の軽率さにうんざりした。
傭兵とは感情に流されて勤まる仕事ではない。
それは母を亡くしたあの日から身を以て知っていたことだ。
そんなことを思っている風麗を雅之は一瞥する。
視線がぶつかり、風麗が目を逸らした。
嘲笑するだろうと思った表情は、先程と同じ冷淡な表情だった。
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