散華の麗人
風麗が外へ出た後に一正は雅之に言った。
『成田の件はよくわかる。早急に立場をはっきりさせてもらうべきや。』
『そうだ。』
雅之は至極冷静だ。
『だが、風麗の気持ちも少しは汲んでやれ。まだ、16歳やぞ。』
『充分、大人だ。第一、傭兵とはそういうものだろう。』
『納得できん。』
一正の優しさに雅之は愚かだと思う。
思えば、八倉家当主の件もそうだ。
彼が愛した女性、伊井薫という人物。
源氏名は大和之姫。
彼女を愚かにもこの期に及んで探している。
当主自身はどうでもいいと関わるなと言っているのにそうする理由は雅之のことを考えているからだ。
『はぁ。』
なんて、馬鹿なのだ。
そう思いながら雅之は呆れる。
あぁ。
『仕方ない奴だ。』
そんな彼を見放してはおけない。
『一試合付き合ってやる。俺に勝てたらその要望を聞き入れよう。負ければ諦めよ。』
“解ったな?”と威圧した。
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