散華の麗人
竹刀と雅之を交互に見た後、笑う。
「で、手合わせか。」
そして、降参だというように手をあげた。
「そうだ。俺に負けるくらいの雑魚を傭兵の巣窟へ放り込めるものか。」
「ひどい言いようやないか。わし、国王やで?」
「そういうことは陸羽派と和解してから言え。」
雅之は竹刀を退けて悪態を吐く。
「そりゃあ……長らくかかりそうやなぁ。」
一正は起き上がりながら溜め息を吐いた。
「天狗のことは知らないが、いくら手練であろうと傭兵が襲撃して捕まっていると考えるのが普通だ。相手が一人とは限らない。尤も、天狗の方も一人とは限らないが。」
「じゃあ、そのことについて調べが付けば行ってええんやな?」
「先ずは目先のことが先だ。」
雅之は冷静だ。
「だが、成田のことは未だ手出しするわけにいかん。それに、当主もそうや。ありゃあ、頑固で扱いにくい。」
一正は肩を竦める。
「まず、素直な奴から。」
そう言って足を踏み出す。
雅之はニィッと笑って姿を隠した。
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