散華の麗人
風麗はどこへも行く宛もなくうろうろしていた。
あんな大口叩いて手ぶらで帰れない。
利光のことだって、結局はやり過ごされただけだ。
あの状況で柚木の件を聞き出すような軽率なことは出来ない。
「あぁ、もう!」
自分に苛立って地団駄を踏む様子は子供そのものだ。
「そこで何をしているのですか?」
不意に声をかけられたのは風麗よりも小柄な青年だ。
青年というには風麗より幼く見えるが、少年と言うには茶々よりも大人びて見える。
曖昧な年頃といったところか。
目を引く美しい顔立ち。
細身であれども男だとはっきりわかる。
「私は今、休憩中といったところですよ。……そう言う貴方は?」
風麗は笑顔でやり過ごす。
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