散華の麗人
川中利光は一正と共に居た。
風麗と話したばかりだからか、怪訝そうな表情だ。
「陸羽派について、疑っているのでしょうか。」
「いいや。」
一正は真っ直ぐに利光を見る。
「与吉郎。」
利光を見据えて呼んだ。
「お言葉ですが、今は」
「あぁ。利光やった。悪い。」
利光に一正は苦笑した。
視線は外さない。
それは真剣だということを何より象徴していた。
「この国について、どう思う?」
単刀直入な問いに利光は戸惑う。
本音を言えばどうなるか。
一正に限って非道なことをするわけがないとは自信があったが、真意が解らない。
「はっきり申しますと、武家の不満が募る一方に御座います。某が見るには……御隠居様の時代の方が良かったと言えましょう。」
「やはりな。」
一正はそう言うと溜め息を吐く。
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