散華の麗人
知っていた。
だからこそ、柚木の条件をのんだ。
「あんたは、全ての制度をわしが治める前のように戻すべきと思うか?今は、酒税と風俗税を課しているが。……例えば、軽減させた農民への税や食料や武具・馬具の仕入れ。」
嘗て決まった商人から調達していたものを、一正が腕が良い農民を募り選りすぐる方針へ変えたことを問う。
「はい。」
はっきりと答える。
「少なくとも、仕入先の変更はそれぞれ元仕入先の商人が不満に思っております。確かに、農民や商人の技術は互いに競い合い、発展しておりますが……それを差し引いても、この不満は解決すべきかと。」
「そうか。」
「ただ、関税に関しましてはこれを元に戻すと一揆が起こるやもしれません。なので、仕入先のみ対策すべきかと。」
「解った。」
一正は返答して立ち上がる。
「商人と相談してみよう。」
その答えに利光は驚く。
「反論はないのですか?」
「ある。」
一正ははっきり言った。
「だが、わし一人で決めるには浅はかやと気がついたんや。」
そう言って利光を見る。
「それに。」
利光は一正を見上げた。
「わしが居ない世のことはあんたに任せたいと思ってる。」
そう言い残して部屋の外へ出る。
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