散華の麗人
本城には陸羽と狐子がいる。
「狐子。」
「はい。」
陸羽に呼ばれて狐子は姿を現す。
「何やら外が騒がしいのう。」
この“外”とは陸羽派外のこと。
所謂、現国王派だろう。
一正達だけでなく、松内などの重臣も陸羽派の家臣に探りを入れていることは両者が良く知っていた。
「そうですね。」
狐子は冷静に言う。
陸羽派よりも穏便な動きだが、反発し合っていることは目に見えていた。
隠居である陸羽が察する程に動きが大きくなりつつあった。
これは戦の予感だと長年の経験と勘が告げている。
「ここに儂がいる限り、あやつらは動かぬとは思うが、最悪の場合も有り得る。」
陸羽は難しそうな表情で言う。
「もし、あやつらが動くなら……動きがあり次第、すぐにバカモノのところへ行け。奇術であれば1日もかかるまい。」
「貴方の身は」
「儂はそう易々とは倒せぬ。それに、家臣もおる。」
狐子に陸羽は答える。
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