散華の麗人
仮面越しの狐子の表情が手に取るようにわかるくらいには陸羽は聡い。
「万が一の話、合戦になれば儂にはどうすることもできまい。あるいは敵になる可能性もある。」
「もしや、狐に主の味方をするように言うのですか?」
「うむ。」
厳しい顔で陸羽は頷いた。
「貴方を裏切るのですか!?」
「致し方ないことだ。」
「しかし」
「バカモノに死なれたいか!!」
陸羽が一喝すると狐子は黙った。
「少し、取り乱したな。済まぬ。」
「いえ。」
(陸羽様は正論を言っている。)
狐子は心の中では理解していた。
「もし必要ならば、儂を討っても構わぬ。」
陸羽は冷静に言った。
「……はい。」
狐子は辛そうな表情を浮かべた。
「願わくば、その日が来ないことを」
「あぁ。」
願うように言う狐子に陸羽は“そうよの”と返事をした。
辛いだろうと狐子の心情を察していた。
だが、だからこそ情けはかけない。
黙って共に居た。
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