散華の麗人
千代ははしゃぐ一正の頭を押し付けるようにして正座させた。
「く・れ・ぐ・れ・も!戦だということを忘れないように。」
「……おう。」
一正はしゅんっとなってしまった。
「…………それで、話を戻そうか。」
悲しそうにしたのを一変させて、一正は深く息を吐いた。
「……兵の数は変えられん。」
「そうですね。」
千代が頷く。
「こちらが3万……差は3倍以上。」
一正は茶を啜る。
「……日ノ本で言う、織田信長のような戦法はどうや?」
「鉄砲3段打ち、ですか。」
風麗が目を細める。

天正3年5月21日
長篠の戦い。
三河国長篠城(現愛知県新城市長篠)をめぐり、織田信長・徳川家康連合軍3万8000と武田勝頼軍1万5000との間で勃発した戦いだ。

当時最新兵器であった鉄砲を3000丁も用意、さらに新戦法の三段撃ちを実行した織田軍を前に、当時最強と呼ばれた武田の騎馬隊は成すすべも無く殲滅させられたとされる。

「……鉄砲が普及した今ではあまり意味がないですね。第一、そんなに多くの鉄砲は調達できませんよ。」
「そうか……」
一正は考え込む。
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