散華の麗人
数週間の月日が経った。
一正は部屋に籠ったままだ。
雅之が後継者に引き継ぐ為の政をするものの、争いが起こるのは時間の問題だった。
それは、今に始まった問題ではなく、一番の問題は一正の容態が悪化していることだ。
「くたばるなよ。」
そういう言葉を投げかけ、雅之は一正を見る。
その表情こそが一正の状態を顕著に表しているともいえよう。
「なぁ、畝。」
「雅之だ。」
雅之は直ぐに訂正を求める。
一正は“相変わらずやな”と笑う。
「次の当主も決めてあるんや。わしは、完全に政から退こうと思っている。」
呻きながら起き上がり、一正は言う。
「民の為にと言いたいのは山々やけれど、そろそろ潮時や。」
「そうか。」
雅之は反論しない。
「秀尚はどうや?」
「あの女が様子を見に行っている所だ。噂では、陸羽派らしい。」
「……」
一正は苦しそうな顔をする。
「止められない、か。」
そう言いながら起き上がった。
「本城へ向かう。様子を見に行っているっちゅうことは、風麗もそこに居るんやろ?」
「そうだ。」
雅之は淡々と答えた。
「例え、四面楚歌になろうとも皆が笑って暮らせる世をつくる。」
そして立ち上がった。
「ここからは命を懸けて、この国を変える。せやから、政から身を引き陸羽派と立ち向かう。」
「革命、か。」
「いいや。今まで築いてきたものを守りぬくんや。」
一正は明け透けに笑った。
「良い度胸だ。その無謀、悪くない。」
雅之はニィッと笑う。
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