散華の麗人
1週間後、陸羽の元に一正と雅之が来た。
「ぬしは何の為にあの城に行ったか、わかっておるか?」
「まぁな。」
呆れた表情の陸羽に一正は笑う。
「ぬしもぬしだ。」
そう言いながら雅之に視線を向ける。
雅之は身元がわからないように笠を被っている。
「何、無謀に少し興味を持っただけだ。」
「?」
陸羽は一正を見る。
雅之の口元が弧を描く。
「貴方に宣戦布告することになるかも知れませんよ。」
身を乗り出し、不敵に笑む。
「……そうか。」
全てを見通したという表情で陸羽は言う。
「死ぬなよ?」
「さぁな。」
一正はへらへらと笑う。
「わしは政を完全に秀尚へ託そうと思っている。そこで、利光を補佐として付ける。」
「良いのか?」
「あぁ。」
急な話ではあったが、陸羽は冷静だ。
陸羽は狐子が居るであろう方を見た。
気配が動くのを雅之は感じた。
「秀尚と利光を呼べ。」
「御意。」
闇の中から返事が聞こえる。
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