散華の麗人
良寧はそれを受け止める。
「娘のこととなると流石に動揺するのですね。可愛い。」
「帰ってくれ。」
景之は頭を抱える。
無表情で困っている様子は辻丸からすると少し滑稽だ。
「茶番はさておき。」
良寧は真剣な表情をした。
「わたくしが参りましたのは、」
「当主様!」
良寧の言葉を遮って家臣が来る。
「何用だ。」
景之は冷徹な表情で見遣る。
家臣が“当主様”と言ったところからして、八倉家の者だろう。
「実は――」
景之の耳元でひそひそと話すと、景之は少し狼狽したような表情になって溜め息を吐いた。
「知るか。」
そう言い放つと家臣は困った顔をして去った。
「何でしたの?」
「取るに足らない話だ。」
景之は良寧の問いに答えない。
「貴様こそ、何だ。早く要件を言え。」
「取るに足らないこと、ですよ。」
「茶番をしている場合ではない。」
良寧の言い方に少し苛立った口調をする。
「では、貴方のその要件についても聞かせてください。」
「関係ないだろう。」
「いいえ。」
景之に静かに反論する。
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