散華の麗人
物見櫓からは此方に迫り来る兵が見えた。
「表は完全に包囲されている。このまま防衛一方というわけにもいかない、か。」
景之は考える。
「おれが行く。」
「交渉でもするつもりならやめておけ。貴様は今やただの小姓だ。」
「む、むぅ。」
辻丸は言い返せない。
「貴様達はこの騒動が終わるまで身を隠せ。俺が行く。」
景之は物見櫓から降りる。
辻丸と良寧も降りた。
「しかし、どうするつもりですか?」
「人間風情、どうとでもなる。」
景之は表門へ向かった。
「ついて行きます!」
「来るな。」
「いや、おれも行く!」
「邪魔だ。」
良寧と辻丸に鬱陶しそうに返事をして景之は門番を見る。
「開けろ。」
「しかし、そこまで兵が……」
「いいから従え。」
「……御意。」
門番はゆっくりと門を開く。
「離れていろ。」
景之の言葉に不満そうにしながらも二人は下がった。
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