散華の麗人
わぁあああと兵が押し寄せる。
「控えよ!」
景之の声に兵は止まった。
「当主は此処に居る。何用だ。」
「討ち取れぇええ!!」
話を聞く様子もなく襲いかかる兵を景之は冷静な表情で見た。
「警告する。その行動、後悔するぞ。」
景之は懐刀を構える。
小さい躯体が宙を舞い、兵を斬る。
人間業とは思えない芸当だが、人数が人数なだけに埒が空かない。
「死にたくない者は去れ。」
その言葉は敵味方全てに向けたものだ。
「良く見ておけ。これが、人間と妖の違いだ。」
懐刀を持ち直すと素早く自分へ突き刺す。
ぽたぽたと血が落ちる。
「!!」
辻丸は息を呑む。
それは、躊躇無くその行動をやる度胸への驚きだ。
景之から漂う異質な雰囲気にその感情は直ぐに失せる。
驚きとも、恐怖とも言えた。
「――もう一度、警告する。」
景之は敵を見据える。
「死にたくない者は、去れ。」
“去れ”と強く警告する。
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