散華の麗人

幕開け

リアンは一足早く部屋にいた。
傍には月夜がいる。
「綺麗な月夜ですね。」
そう言われて月夜は月を見た。
「こんな時は、なんでもうまくいきそうな気がしません?」
リアンは月を見て笑った。
月夜も同じように笑った。
「せかい、は……まだ先。」
月夜は月に手を伸ばした。
「……でも、貴方がいると近道になりそうだ。」
リアンは楽しそうな目をした。
ふふふ、と声がする。
「約束、守ってね?」
「もちろん。」
リアンは真っ直ぐ月夜を見た。
「貴方に利用価値がある限り、裏切りも偽りもしない。」
その言葉に月夜は“がんばる”というように頷いた。
「……本当に、貴方はよく働きますね。」
そして、眼鏡を軽く上げて過去を振り返る。

それは、大村隊が襲撃されるよりも前のこと
月夜はリアンの命で細川に居た。
村娘になりすまし、見回りの兵士を観察する。
柚木隊の人物が現れるのを待つ。
そして、1人の男に声をかけた。
『……あの。』
その男は月夜を睨んで、無視しようとした。
『陸羽派』
そう言うと、男はぴくりとこちらを振り向いた。
『現細川派である大村隊を奇襲したいと陸羽派の同志が口々に言っているそうですよ。』
『なぜそれを』
『疑うなら、この機を逃せばいいでしょう。あぁ、愚かしい。』
そう言って話を遮って姿を消した。.
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