散華の麗人
すると、雅之は身を屈め、一正に跪く形になる。
「一度しか言わない。よく聞け。」
一字一句はっきりと言う。
「俺は仕えるのは貴様が最後だ。死ぬことは赦さない。死んでも黄泉だろうが地獄の底を突き抜けようが、逃がしはしないからそのつもりでいろ。」
「そこまで追っかけるんかい。」
「そうだ。」
雅之は冷静だ。
「約束は守ってもらう。でなければ仕事の割に合わない。」
そう言うと真っ直ぐに一正を見た。
「皆が笑える世の中……見せてくれるのだろう?」
泣きそうな顔で笑ったように見えた。
切なる願いだろう。
雅之には解っている。
それが容易ではないことくらい。
「あぁ。」
一正は頷いた。
卑怯だ。
出来もしない約束を引き受けるなど。
笑ってみせて言う。
「その為に、わしは悪になる。」
現国王が自分のやり方を好んでないとは知っている。
「誰から何と言われようと、信じる道を行くだけや。」
だからこそ、時間が欲しい。
「それでこそ、細川一正だ。」
雅之は満足げに笑った。
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