散華の麗人
いくつかの国を超えるには時間を要した。
馬を置いて進まねばならなくなったり、変装しなければならないこともあったが最短で進む。
幸い、争いごとに巻き込まれることはなかった。

“風麗、音信不通だったので心配しました。
私の身体はどうやらもう長くはないみたいです。
しかし、前よりは回復しています。
ですから、心配はいりませんよ。
そちらでは上手くやっていますか?
貴方のことです。どうせ、無茶ばかりしているのでしょうね。
あまり無茶をしたら、怒りますよ?
……もう、貴方の師匠ではないのに、おかしいですね。
何故だか、貴方を破門した今でも、どうしても貴方のことや弟子達のことが気になって仕方ないのです。”

手紙の内容を思い浮かべる。
(貴方まで、いってしまうというの?)
零れ落ちる砂のように大事なものが失われていく。
「焦りは何も利益を生まない。」
そんな風麗を見透かしたかのような八雲の言葉に頷く。
(そうだ。だから、出来ることをしよう。)
風麗はそう思って前を見据えた。
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