散華の麗人
しばらくすると、竜華国の荘龍山へ着いた。
その山奥には山小屋の隣に、山奥に似つかわしくない大きな道場が並立した家があった。
「師匠。話せるといいのですが……」
風麗は呟く。
そして、門戸を叩く。
“コンコン”
「はい。」
向こうから若い男性の声がした。
しばらくして、男性が現れた。
「貴方方は……」
男性が怪訝そうにしていると、後ろから女性が現れた。
「風麗様……そして、沢川様ですね。どうぞ、こちらへ。」
女性は3人を中へ案内した。
八雲のことは付き添いの小姓かと思われたらしく、触れなかった。
そのことを察した八雲は小姓らしく会釈するのみで差出た真似はしない。
「さっきの人は笹川家の……確か、2年前くらいに破門になったっていう」
「はい。笹川晴信にあります。今はここで小姓として働いております。」
風麗に答えた女性に沢川は嫌そうな表情をした。
「竜華国に細川の者がいることが気に入らないのでしょうね。貴方は特に」
「いえ……」
沢川は視線を逸らす。
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