散華の麗人
その上で、態度を一向に変える気配はない。
「これで、此方の話は終わりだ。本題に入ろうか。国王。」
「その前にお前の不遜な態度を改めよ。」
「これでも敬っている。」
“何か問題でも?”という顔だ。
秀尚はげんなりとしている。
その仕草が一正とそっくりなので、リアンは声を殺して笑った。
利光はあらぬ方向を見ているが、恐らく彼も笑っているのだろう。
「……まぁよい。仮にも父上の兄だからな。大目に見てやる。」
秀尚は呆れ顔をする。
「此処に来た理由を包み隠さず言うと、八倉家の襲撃について父上が関係していると思ったからだ。」
(何を“包み隠さず”、や。よう言うわ。)
一正が心の中で悪態を吐く。
最初から責任を押し付けるつもりだった。
そう、知る。
口角を釣り上げ、嘲笑してやろうか。
“あんたらの策謀なんやろう?”と糾弾してやろうか。
秀尚の隣を見る。
利光……“国王の左腕”と呼ばれている男。
彼さえ、この首謀者というのか。
今まで信頼していた。
この瞬間まで、秀尚が継がなければ彼に託しても良いとさえ思えるくらいに。
気が滅入りそうになりながら、一正は咳をする。
「八倉家、か。わしはその件に関与しとらん。戸尾黨和の独断やと見とるが。」
嘘だ。
嘘には嘘を、というように上辺だけの笑みを浮かべる。
雅之さえその嘘が見抜けないだろうくらいに完璧な笑顔。
狸と評される所以の演技。
決して、表に出さない疑問。
そして確信。
< 880 / 920 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop