散華の麗人
一正は笑みのままで秀尚を見る。
「わしを疑うとは、心外やなぁ。」
「いくら戸尾が八倉家を滅ぼしたくとも、この状況で動くには理由があると思ったまでだ。」
秀尚は言う。
「わしに動機があると?」
「先程、跡を継がせる気がないと言ったな。」
「あぁ。」
「それだ。」
一正に秀尚は言う。
「おれが邪魔なのだろう?」
「そうなら、長男に継がせとるわ。」
そう答える一正は表情をかえない。
「話にならん。言いがかりなら、ちぃとはマシな文句をつけるんやな。畝……やなくて、雅之の小言の方が余程筋が通っとるわい。」
“畝”と呼ばれかけた雅之の射抜くような視線を受けながら言った。
(そう簡単にはいかないか。)
秀尚は思う。
しかし、この様子だと少なくとも当分は自分らに危害を加えたり、王位を狙うことはないのだろうということは解った。
(それで良しとするか。)
これ以上の深追いは無意味だと思った秀尚は何も言わない。
「話はそれだけか?」
一正はため息混じりに言った。
「あぁ。父上が変な気を起こしていないか心配したまでだ。……杞憂だったようだが、な。」
秀尚は立ち上がる。
「せいぜい、ご自愛されよ。」
「そうする。」
一正も立ち上がり、秀尚を見送った。
「わしを疑うとは、心外やなぁ。」
「いくら戸尾が八倉家を滅ぼしたくとも、この状況で動くには理由があると思ったまでだ。」
秀尚は言う。
「わしに動機があると?」
「先程、跡を継がせる気がないと言ったな。」
「あぁ。」
「それだ。」
一正に秀尚は言う。
「おれが邪魔なのだろう?」
「そうなら、長男に継がせとるわ。」
そう答える一正は表情をかえない。
「話にならん。言いがかりなら、ちぃとはマシな文句をつけるんやな。畝……やなくて、雅之の小言の方が余程筋が通っとるわい。」
“畝”と呼ばれかけた雅之の射抜くような視線を受けながら言った。
(そう簡単にはいかないか。)
秀尚は思う。
しかし、この様子だと少なくとも当分は自分らに危害を加えたり、王位を狙うことはないのだろうということは解った。
(それで良しとするか。)
これ以上の深追いは無意味だと思った秀尚は何も言わない。
「話はそれだけか?」
一正はため息混じりに言った。
「あぁ。父上が変な気を起こしていないか心配したまでだ。……杞憂だったようだが、な。」
秀尚は立ち上がる。
「せいぜい、ご自愛されよ。」
「そうする。」
一正も立ち上がり、秀尚を見送った。