散華の麗人

女性は素早く馬を止め、降りる。
そして、地面に正座し、三つ指をついて深々と土下座した。
「このような状況になってしまい、何とお詫び申していいかわかりませぬ。」
そう謝罪をすると、横目で２人の少年を睨んだ。
「辻丸、ゆきちゃん。」
小声で名前を呼ぶ。
謝罪を求めているようだ。
「その呼び方を今直ぐ訂正しろ。」
少年は不自然な程の無表情さで言う。
「おれのせいではない！」
辻丸は少年と対照的で、目尻を釣り上げ、怒りを顕にしている。
それどころか、地団駄さえ踏んでいる。
「良いから……」
女性は肩を震わせる。
そして、素早く２人の頭をわし掴んだ。
「謝りなさい！」
怒りに任せて地面へとそのまま押し付ける。
“ドゴォ”という轟音と共に、女性がやったとは思えない威力の土煙が舞う。
「いでぇええええ」
叫ぶ辻丸。
「……」
もう１人の少年は黙って頭を上げた。
「よもや、この俺に……人間風情に、頭を下げさせるなど。」
激しく打ち付けた顔に付いた土を振り払いながら、少年は女性を睨む。
「貴様……」
無表情の瞳に怒りが混じった気がした。
「貴方が大人げないのが悪いです。」
「他人の頭を地面に叩きつける奴が言う台詞か。」
「灸を据えたのです。」
女性は涼しい顔をしている。